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記憶術と右脳、左脳、前頭葉 |
「記憶術は右脳を使う」は本当か?
| 佐々木 科学の面から見た記憶術はどうなっているのでしょうか。記憶術は右脳を使う覚え方だと聞きましたが…。 |
高山 「記憶術が右脳を使う」ということは間違いとは言い切れませんが、誤解を招く表現ですね。
人間の脳は右脳と左脳で役割が違う、ということが発表されてから、イメージや空間認識にかかわる右脳への期待が高まりすぎました。「右脳を鍛えれば頭がよくなる」という説があちこちで流れ、記憶術もそうした「右脳信仰」の流れに沿って説明されるようになったのです。
でも、すべての筆記試験はことばや論理で成り立っています。そのことばをいったんイメージ化するために右脳を使うだけで、実際は左脳と右脳を交互に交流させて使っているのです。
しかも、記憶術はそれだけではできません。
記憶するということは、二つのものをドッキングすること
| といいますと? |
私たちが何かを記憶するということは、必ず二つまたはそれ以上のものを関連づけることです。
たとえばfingerという単語の発音を覚えても、それが指のことだということを覚えなければ意味がありませんね。同様に、アスワンという単語は、少なくともエジプトの地名であることとセットで覚えなければなりません。
記憶術では、ことばを視覚的なイメージに変換するだけでなく、イメージとイメージをドッキングさせて覚えます。この方法は芥川龍之介の「鼻」と「河童」を覚える例でやりましたね。
「芥川龍之介の鼻を河童がかじった」
というようにイメージをドッキングさせるわけですが、このとき私たちは頭の前の部分、前頭葉を使っているのです。
記憶術は、意欲・創造・実行をつかさどる前頭葉を使う
| 前頭葉にはどんな働きがあるのですか? |
前頭葉は、私たち人間が人間として生きていくための司令塔の働きをしています。
具体的には、大脳の各部分で分業化された機能を相互に関連付け、調整して、意欲や工夫、創造、実行などにかかわっているとされます。この前頭葉の機能が低下すると、人は日常生活のさまざまな局面で意欲がなくなってしまいます。
前頭葉の役割は、オーケストラの指揮者をイメージするとわかりやすいでしょう。どんなに美しい曲でも、ピアノや弦楽器、金管楽器や木管楽器などがバラバラに演奏したら、もはや音楽ではなくなります。
同じように、前頭葉がまったく機能しなくなると、もはや人間的ではなくなります。
記憶術は、だれにも備わっている創造力を使う
| 記憶術は創造力を使うということですが、その創造力がない人はどうするのでしょうか? |
記憶術が必要とする程度の創造力は子供から高齢者まで、だれにでもあります。
たとえば、朝食を食パンにしようと思ったとき、いくつかの選択肢があります。
「食パンをトーストしてバターを塗って食べようか、それともジャムにしようか。両方塗るのもおいしそう。でも、ハムとチーズがあるからサンドウィッチにしようか。飲み物は……」
と、その程度の組み合わせを考えることでも、立派な「創造」なのです。前頭葉の機能が低下するとこれができなくなります。
もう一つ、「創造」の例です。「5月」ということばから連想することばをできるだけたくさん挙げるような頭の働きです。
私なら5月から真っ先にゴールデンウィークということばを連想します。それから、こどもの日、こいのぼり、柏餅(かしわもち)、憲法記念日、若葉、つつじ…と連想が続きます。
この程度の創造力はだれにも備わっているものです。だから、記憶術が必要とする程度の創造力がないという人は、私にはまず考えられません。
| 「記憶術は右脳、左脳、前頭葉を有機的に使う」のまとめ ・記憶術では右脳と左脳を交互に交流させて使う ・記憶するということは、二つのものをドッキングさせることである ・記憶術は、意欲・創造・実行をつかさどる前頭葉を使う ・前頭葉は大脳全体の指揮者である ・記憶術が必要とする程度の創造力はだれにもある |


★記憶術と右脳、左脳、前頭葉 
